屋台の寝床


人がザワザワ動いている昼間、天神の大通りから一歩入った静かな今泉の月極駐車場で他の車に混じってスヤスヤ眠る二台の車がいる。昨夜の営業を終えた屋台がいつもの様にこの月極駐車場に帰ってきているのだ。営業時十人程の客がワイワイお酒を飲んだりラーメンを食べている屋台は、店じまいとともにうまくたたまれコンパクトになり駐車場の枠内にぴったりと収まっている。あのたたまれた屋台の中には客が座っていた椅子までも収まっている。

夕方になるとバイクに乗った屋主や車に乗った屋主が屋台を迎えにくる。屋台をそれぞれのバイクや車に繋ぐと街の中へと散っていく。あちらこちらから集まってきた屋台は、いつもの様に歩行者道路にずらりと並び美味しそうなニオイを漂わせる。夕方から夜中にかけて営業し、博多ラーメン、おでん、チャーハン、やきとりなど様々な種類の屋台が並ぶ。街のあちらこちらでほんわりと湯気が立ち、美味しそうな屋台料理のニオイとお客の笑い声で賑わっている。それにつられてのれんをくぐる人も少なくないだろう。

屋台には『一杯引っかける』という言葉がよく似合う。帰り道にラーメンを引っかけて行く人。お酒を引っかけて行く人。屋台にはどこかへ行く途中の路上で美味しいものが食べられるという魅力があるからだろう。また屋外でアツアツの食べ物が食べられることも魅力だろう。すんなりと人が集まるきっかけとして『屋台』は都市でうまく機能し、また夜の街の風景をつくり出しているひとつである。

コンパクトにまとまっている姿もまた屋台の魅力だ。あのたたまれた屋台からは美味しい料理は想像出来ない。ただ屋根の上の看板だけがお店であることを示している。朝方この月極駐車場に帰ってきた屋台は、日が暮れ始める頃まで屋主が迎えに来るのをじっと待っている。

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